昭和学報

【昭和学報】講演会「生命を夢見て:ウクライナと共に」で知る故郷への思い

田丸 萌夕希
好きな言葉はご縁。美術館巡りが趣味。
 ウクライナ出身の現代美術作家ヴィクトリア・ソロチンスキーさんによる講演会「生命を夢見て:ウクライナと共に」が5月13日、本学オーロラホールで開かれた。ロシアに侵攻されたウクライナへのチャリティー活動と個展のため来日したソロチンスキーさんが、日本の若者に話がしたいと、この講演会が開催された。本学の学生・教職員やテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)の学生、一般の方たち約150人が参加した。

移民としての生活

 ロシアがソ連として存在していた頃にマリウポリに生まれた。その後、イスラエルに6年間住んでから、カナダへ移住し、約10年間英語とフランス語にて学校教育を受けた。続いて、美術修士号を得るためにニューヨークへと渡った。現在はドイツ・ベルリンを拠点としており、これまでに展覧会は75回、3か国を回った。90以上の国際的なメディアに取り上げられ、数々のプロジェクトを手掛けてきた。

故郷ウクライナの今

 ソロチンスキーさんは、ロシア侵攻前のウクライナの街と侵攻後の様子を比較し「起きている事が信じられなくて、感情的な気持ちになる」と時折涙を見せながら話した。ソロチンスキーさんの故郷であるウクライナのマリウポリでは、講演時にはなお激しい戦いが続いていた。起きていることの重大さを改めて感じた。

家族との繋がり

 ソロチンスキーさんの曽祖父、曽祖母はウクライナのマリウポリで革命家として重要な役割を果たした。曽祖父、曽祖母は革命的で、正義、平等、兄弟愛を求めて戦った。旧ソ連の統治下で起きた飢餓などを生き抜いて家族が歩んだ道は、そのままウクライナの歴史を語っていた。
 互いを大切にしてきた家族の中でソロチンスキーさんが最も影響を受けたのは、祖父だった。祖父は、タレント、アーティスト、俳優、舞台監督、写真家として活躍し、たくさんの顔を持っていた。ソロチンスキーさんが、アートを作る手段として写真を選んだのもその影響で、暗い現像部屋で一緒に過ごした事が1番の思い出として記憶に残っているという。

作品に込めた故郷ウクライナへの思い

 講演会の後半では、来日の目的であるチャリティ個展「生命を夢見て:ウクライナと共に」に出展した作品を中心に紹介した。
 2009年から撮影が続いている「Lands of No-Return(帰らざる国)」はソロチンスキーさんの祖母を思い出させる。このプロジェクトは、人々に過去に対する敬意を示すために企画された。祖父母が住んでいた限界集落で、そこに暮らす高齢者を撮影した。何も手を加えず、自然や、生活の様子、人々をそのまま撮影した。結婚生活70年以上の90歳夫婦の写真が目を惹いた。ウクライナの象徴でもある、老夫婦の情熱や愛がそこにあるとソロチンスキーさんは語った。
 「The Space Between(あいだの空間)」という作品は、7枚の自身のポートレート写真で構成されている。ソロチンスキーさん本人の記憶とウクライナの自然が融合した作品になっている。異なる文化を持つ人々をつなぐ架け橋として、この作品を撮ったという。
 ソロチンスキーさんの作品の中で最も印象的だったのは、「歌」だった。実際には存在しない言語で歌詞は作られ、音は即興で11分作曲したという。一部を実際に聞いてみると、歌詞はなく、意味はわからないが、心の奥底へと響いた。
 日本で行われた展覧会に合わせて、新しくもう1曲歌を作ったそうだ。ソロチンスキーさんの作品では、家族、ウクライナでの生活、子供の時の記憶がよく見受けられる。異なる文化、価値観、言語、バックグラウンドを持つ人たちを、作品によって繋げようという情熱に感銘を受けた。

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