グローバル

【卒業生訪問】ノーベル平和賞に輝く国連世界食糧計画で働く本田容子さん

 世界の飢餓と貧困と闘う国連世界食糧計画(WFP)に2020年ノーベル平和賞が贈られました。エジプト・カイロのWFP北アフリカ中東地域事務局の情報管理部ユニット長を務める本田容子さんに、Zoomで話を聞きました。(1998年英米文学科=現・英語コミュニケーション学科=卒)

家族と聞いた受賞の知らせ

 WFPにノーベル平和賞が授与されるという知らせは、イエメンの同僚からのメッセージで知りました。週末で家にいましたので、8歳の長女、6歳の長男を呼んで一緒にテレビで受賞の中継を見ました。
 WFPは日本やアメリカなど各国政府の任意拠出で運営されている国連組織です。この度のノーベル賞受賞はコロナ禍で資金を拠出するドナー国々も経済難に陥る中、世界中で最も困難な状況に置かれている人々に、より世界が目を向ける必要があることを再確認する意味があると思いました。同時に、WFP をはじめ、現地のNGOや国際NGOなど、日々現場の最前線で仕事をしている人道支援機関職員に対するねぎらいの意味もあったと思います。


カイロでZoomインタビューに答える本田さん

世界へ発信する役目を担う

 WFPはイタリア・ローマに本部があり、世界約80か国でスタッフ約1万9000人が働いています。その多くは単独で赴任する危険地域ですが、ここカイロは家族連れで赴任できる拠点の一つです。エジプト人の夫と、一度はお互いの国で生活したいと話していましたので、2016年にこのポストに応募してローマ本部から異動しました。


2015-2016年度、ローマ人事部採用担当時、ジュニア・プログラム・オフィサー(若手職員)と(右から3人目が本田さん)@Liyuan Xiao

 情報管理部は、中東、北アフリカ、中央アジア17か国のWFP事務所から送られてくるWFPのオペレーションの情報を集約しています。コロナの影響で今現在はすべての国が危険度が最も高い状態とされていますが、送られて来た情報は精査され、本部の緊急危機管理部に送られます。これらの情報は各国のオペレーションの方針決定や、組織幹部が各国政府との交渉、会議を行う際に内部情報として使われます。
 またそれと同時に、外部に向けた情報発信もしています。WFPのウエブサイトや人道危機に際して各国政府や国連機関やNGOの連携を図る国連人道問題調整事務所(OCHA)等のウエブサイトで各国の食糧安全保障の状況やWFPのオペレーションの現状を紹介しています。例えば、シリアでは490万人に食糧支援を行っており、詳しい内容を誰でも知ることができます。年次報告書やローマ本部へのブリーフィングなどの業務も行うこの部署には、エジプト、ドイツ、イタリア、ロシア、アメリカなど様々な国からのスタッフがいます。


WFPからの支援食糧を求める人々(アフガニスタンで。本田さん提供)

きっかけは異文化コミュニケーションの授業

 昭和女子大学に入ったときは、英語に自信はありませんでした。でも「異文化間コミュニケーション」や「国際関係論」の授業をとるなかで授業以外でも異文化に触れたくて、放課後は地元のNGOを通して、在日外国人に日本語を教えるボランティアに参加しました。たまたまその時に担当したフィリピン人の女性が日本のNGOで仕事をしていた人で、彼女から初めて途上国の開発に携わる仕事について話を聞きました。そして、年末にはフィリピンの彼女の家にホームステイしながら、様々な場所に連れて行ってもらいました。
 中でも印象に残っているのは、今では政府に撤去されて無くなっていますが、当時、スモーキーマウンテンと呼ばれていたマニラ北部にある、煙のたつスラム街の巨大なごみの山です。この旅で、生まれて初めて、フィリピンの都市と農村における貧富の格差を目の当たりにして、自分が置かれてきた恵まれた環境と比較し、身が引き締まる思いがしました。将来の方向性を考えていた私は、この時「将来は関発関係の仕事に就きたい」と思うようになりました。


留学先の昭和ボストンで友人、アメリカ人の寮監、スタッフと(前列左端が本田さん=本田さん提供)

 フィリピンから帰国後「国際公務員になるための留学と就職」という本を読んで調べると、国際開発の仕事に就くのに自分に足りないものは修士号と専門性であることがわかりました。そこで、以前昭和ボストンに約4か月間留学した際に知り合ったホストファミリー宅を大学4年生の夏休みに再訪し、現地の大学のサマースクールに通い英語力を鍛えました。今回、ノーベル賞受賞が決まったときもホストファミリーが連絡をくれて「あのころから(開発を)やりたいって言ってたわね」と喜んでくれました。
 大学卒業後は、イギリスのマンチェスター大学に留学し、開発経済学のディプロマを取り、翌年、農村開発管理と経済学修士号を取得しました。

人と人とのつながりを大事に

 実は、この留学中に卒業後受験を予定していた外務省のJPO試験(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)の募集要項が変わり、応募に実務経験が必要になりました。大学院を卒業して帰国、たまたま新聞で見た、日本政策投資銀行のリサーチアシスタントに応募し、「2年後に国連職員になりたい」と面接で明言して採用されました。
 このときの上司が世界銀行にも出向の経験があり、フランス語と英語が堪能な、まさに国際的な舞台で活躍されていた方でした。非常に厳しいながら膨大な英語の資料を読み込んでレポートにまとめる力や農村金融の知識など、後につながる能力を指導して頂きました。その貴重な経験はその後の国連職員としての色々な場面でも活かされていると思います。
 2年後に晴れて外務省のJPO試験に合格し、WFPモザンビークの国事務所に赴任、農村開発のプロジェクトに3年間携わりました。
 今年でWFP勤務17年目になりますが、これまでWFPでは沢山の貴重な出会いがありました。中でも私のメンター的な存在なのが、モザンビーク事務所で出会ったアンゴラ人の同僚です。彼女は非常に仕事熱心な人で、当時は小学生の子どもが二人いるにもかかわらず、毎日、夜遅くまで仕事をしていました。その彼女にどうしてそこまで頑張るのか聞いた時に返ってきた言葉が忘れられません。
 ”Hunger cannot wait.” 「空腹は待てないのよ」――彼女の本職は獣医師でしたが、内戦のために国内避難民となり、WFPの食糧支援により生き延び、その後、WFPの職員になったのでした。WFPにはこのように現地の人を一番に想い仕事をする職員が沢山います。私も現場の最前線で活躍をするWFPで仕事を続けたいと思い、3年後に正規職員になりました。モザンビーク勤務後、アフガニスタンのカブールで3年近く資金調達や食糧パイプラインの任務を担当しました。


WFPアフガニスタン事務所の倉庫にて。日本からの食糧支援の贈呈式の準備(中央が本田さん=本田さん提供)

 アフガニスタンはイスラム教の国なので、通常、男性は母子家庭の家に入ることができません。プロジェクトの視察の際は、女性の私だけが中に入れてもらうこともありました。ある時は、家の中にいた母親が私の手を取って、戦争で夫をなくし、母子家庭でいかに苦労したかを語り、「WFPの食糧のおかげで教育にお金を回せるようになり、娘が学校に通えるようになった」と話してくれることもありました。当時は、危険と隣り合わせで緊張の連続でしたが、チームの一体感、やりがいに、大変だと感じたことはありませんでした。


アフガニスタンで食糧支援先の家庭を訪ねて(本田さん提供)

アフガニスタンでは女子教育への理解が乏しく、男女間で識字率にも差がある(本田さん提供)

ベストなチーム作りに向けて

 国連WFPは紛争や自然災害などの緊急時に食糧支援を届けるとともに、途上国の地域社会と協力して栄養状態の改善と強い社会基盤づくりに取り組んでいます。私自身は子どもがまだ小さいので緊急支援を行う国への単身赴任ができず、多少もどかしさがありますが、長いキャリアの人生のうち、今は現場のサポートに回る時期かなと思っています
 現在、私は、将来管理職になる為の準備として、リーダーシップ育成の研修を受けています。チーム一人一人の個性をどう伸ばしていくか、私の反応の仕方でどうチームの活躍が変わっていくか、真のリーダーになる為には自分のどの要素を伸ばさなければいけないか、などを色々な方面から勉強しています。


多様な国籍、文化の中でお互いの違いを尊重してチームを作りあげる。16か国の国事務所がカイロに集まる年に一度の合同研修。(本田さん提供)

 WFPはどのポストについてもチームありきの組織です。多様なバックグラウンドの人々が集まる中で、ステレオタイプ化せず、一人一人がお互いに尊重しあうことが大切です。このような環境の中では、思ったことは言葉に出して言わないと相手にわかってもらえません。いかに自分の気持ちをシンプルに伝えられるか、自分の意図を相手にうまく伝えられるか、日々心がけているところです。

学生時代は好きなことにチャレンジ

 昭和女子大学で教わった渡辺和子先生の本は、今もどこに行くときも必ず持っていきます。本はボロボロですが、人生哲学の授業では考えさせられることが多く、世界で生きていくのにはどこに身を置いたらいいのか、困難にぶつかったときにどうすればいいのか、自分の生き方や将来について集中して考える時間を頂きました。大学卒業後の人生設計をするための基礎を作って頂いたと思っています。
 大学生の皆さん、大学時代は、ボランティア、留学、アルバイトなど、興味あることに思いっきり挑戦して、色々な経験を積んでみてください。一つ一つがその後の人間形成につながると思います。 


卒業式でクラスの友人と(本田さん提供)

 国連で働きたい学生さんが多いと伺っていますが、国連に入ること自体は目的にはなりません。子ども、難民、食糧など、どの国連機関で、何をしたいのか、何に取り組みたいのかを考えてみることも大事だと思います。そして、その先、直接的に国際機関に関わらなくても、ほかにも目的につながる道があるかもしれません。
 将来の仕事を考えるとき、それは時に遠回りに思えるかもしれませんが、色々なことを経験する人生、日々の積み重ねが将来に繋がって行くと思っています。


エジプト人の夫、長女(8)、長男(6)とアスワンにて(本田さん提供)

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