授業・学生の活躍

想像力で社会課題をデザインする
――環境デザイン学科デザインプロデュースコース卒業制作

2020年度から環境デザイン学部になる、昭和女子大学環境デザイン学科の学生たちによる卒業制作を4つのコースごとにご紹介します。

 生活科学部環境デザイン学科デザインプロデュースコースでは、デザイン力、企画力、行動力を培います。今、「デザイン」が必要とされる分野はどんどん広がっています。アートに限らず、プロジェクトや、社会課題の解決にまでデザインする力が求められています。その中で、デザインに関する基礎知識を身につけ、様々な領域でデジタルスキルを駆使して多様な価値をデザイン、発信し、企画・構想・マネジメントに必要な手法や理論を総合的に学びます。
 2019年度デザインプロデュースコースの学生50人が卒業制作を選択し、学びの集大成となる卒業制作展の準備を進めてきましたが、残念ながら、新型コロナウイルス感染拡大予防のため開催中止となってしまいました。その中から、2019年度卒業制作賞を受賞した、工藤真菜さん、齋藤瑞紀さん、柳澤夏織さんの研究成果を紹介します。

家族と繋がり、家族について考える「家族-工藤家の催し」

 工藤真菜さんの卒業制作は、「家族-工藤家の催し」です。自らの家族・親族がこれまで行なってきた家族行事を多角的に見直し、家族間の人間関係をより深め、家族の一員としての自覚や連帯感を育むアイディアと、社会に対して家族を考えるきっかけを提起しました。


工藤家の皆さん

 工藤さんの家庭は昔ながらの年中行事が残り、親族同士で集まる頻度が高いのですが、それが周りと少し異なると気づき、調べてみると日本では単独世帯と核家族世帯の割合が増加する一方、親族で暮らす世帯が減少していました。高齢者の一人暮らしや、同居から車で1時間以内の近居へと変化していることも、家族行事や親族の繋がりが減る要因と考えました。
 同時に、工藤家の催しを振り返ると、写真を撮る習慣がなく、家族・親族間の連絡にSNSを使い始めたため、携帯電話を持たない祖父母との共有が疎かになっていることに気付きました。

 こうした課題解決に、卒業制作で3つのことに挑戦しました。
 一つは、家族行事をより楽しく継続するために「お月見会」を新たに企画し、準備段階から家族の様子を記録しました。日本の家庭行事を平安時代まで遡って調べると、クリスマスや母の日など海外由来の行事が浸透する一方で、現代に残っている日本古来の季節行事が少なかったことから、お月見会を選びました。
 家族の反応に手応えを感じ、既に決まっていた国内旅行にも行事写真を持参してもらい、イレギュラーな思い出を作って特別感を演出しました。
 二つ目は、祖父母とも思い出を共有するツールとして、「これまで」と「これから」の工藤家の家族行事を一目で確認でき、時間とともに移り変わる家族の変化を楽しむカードを制作しました。負担にならず、継続して制作することができるよう、蛇腹折りのシンプルなデザインで、1冊に約2年分の写真が保存できます。昨年末に祖父母にカードを見せたところ、昔の写真を懐かしそうに見比べて、とても喜んでもらえたそうです。


「思い出の積み重ね」をコンセプトに制作したカード

 三つ目はブックレットの制作です。ブックレットを手に取った人々が、日本の昔ながらの家族の光景が残る工藤家の姿から家族の良さを感じたり、それぞれの家族に思いを馳せたり、さまざまなかたちに未来を描くきっかけを社会に提示しました。手にとって見て感じてもらうことをイメージし、携帯電話を持たない家族に配慮し、デジタルではなく、アナログの良さが活かされた印刷物です。


ブックレット

 昨年12月に学内で配布したところ、学生からは、写真からにじみ出る工藤家の雰囲気に羨ましいといった声や、自分たちの家族を振り返る感想が寄せられました。

 工藤さんは今回の制作を経て、自身のアイデンティティである「工藤家」の「家族の優しさ、真面目さ、何も言わなくても呼びかけたら応じてくれるあたたかさ」を改めて実感することができたといいます。
 巣立ちの季節――。時の流れとともに形を変える家族が、これから先もより強く繋がっていくことを願い、家族のために自分ができること、大切にしていきたいことをこれからも考えていきます。

「他者を知ることから自らを知る」対話型双方向成長コミュニティ 

 齋藤瑞紀さんの卒業制作は、「prologue」(プロローグ)と名付けたプロジェクトです。「他者を知ることから自らを知る対話型双方向成長コミュニティへの挑戦」をデザインしました。根幹に「あらゆる人がいてこそ社会のバランスは保たれる」という考えを据え、「ありのままの自分を愛し活躍できる社会」を目指します。
 
 出発点は、「自分は内向的な人である。内向的な人は不利である」という、自身が感じていた生きづらさでした。人付き合いが苦手でしたが、一生一人では生きられないと、「”内向的”という殻」から社会に出ることに挑戦しました。たどり着いたのが、社会全体で特定の規範を画一的に追い求めるのではなく、参加者が自らの良さを見つけて生かしていく対話を通じたコミュニティです。

 prologueでは、参加者はまず、一つのテーマについて自由に意見や解釈を話します。考えの相違を掘り下げていくことで、自ら無意識に作り上げていた常識に気づきます。チームでの発見を全体で共有し、参加者は振り返りを通じて新たな発見と出会います。

 昨夏、コミュニティのかたちを検証するために昭和女子大学内で環境デザイン学科2年生~4年生を対象に対話の場を設けました。


学内での検証の様子

 プロジェクトの方向性が見えてきた9月、学外の学生演劇団体「劇団Яeality」の協力で、外部実践に臨みました。主体者側の動機づくりやファシリテーションの工夫に課題を得たほか、「物語を読み解く」「役の気持ちになる」といった演劇に必要なスキルに、自分の常識の枠を知る対話との親和性を感じたといいます。


学生演劇団体「劇団Яeality」でのワークショップ風景

 学内外での2つのワークショップを経て見えてきた課題解決を意識しながら、再び学内での活動に戻った齋藤さんは、参加者がともに主体となることを目指し、より深く参加したいという意識を育てられるように進め方を変えたり、プロジェクト主体者として、また挑戦者として必要なスキルを整理するなどして試案を重ね、精度を深めました。

 今年4月から、高円寺のスタジオで毎週土曜日に演劇が好きな人たちが集うサロン「演劇サロンプロジェクト」で、毎月1回サロン形式でのprologueをスタートさせます。自分を認め、他者を認める--未熟な自分でも素直に生きることを受け入れてくれる社会への挑戦は、卒業後も続きます。

見えない問題を自分の頭で考える「Think」

 柳澤夏織さんの卒業制作は、プロジェクト「Think」です。高校生を対象に、身近な消費行動を振り返りながら、背景を知り社会へ興味を持ってもらうワークショップを企画、実施した内容をまとめました。
 柳澤さんは、約一年半前から株式会社CANVASで学校や行政、企業と協力しながら、幼児から高校生を対象に、創造的な学びのためのワークショップを企画運営、講師としても携わっています。
 その中で、化粧品の原料採掘に児童労働が関係していることを知り、自身が全く背景を知らないまま消費していたことに憤りを感じました。そこで、高校生と一緒に考えるワークショップを設計しました。高校生を対象にしたのは、選挙権年齢の引き下げなどで、今後政治や社会との距離が一層近づく年齢であること、視野を広げ自分の物差しで選択する学びの場が必要だと考えたからです。

 2019年9月、長野県の清泉女学院高校で、1年生67人と教員3人が参加して「リテラシーワークショップ――化粧品から考える」(CANVAS主催)を行いました。
 まずどんな時に化粧をするのか・情報を得るのかなど、生徒と対話をしながら生活を振り返ることから始めました。


「リテラシーワークショップ――化粧品から考える」(CANVAS主催)

 次に、子どもたちが危険な穴で原料採取を行なう映像を視聴したり、化粧品が企業から消費者に届くまでの流通を学んだり、課題を共有し、見えない情報の存在を認知しました。最後は、なぜ消費者が背景を知ることがないのか、これから大切にすべきことは何か、ポイントを抑えワークをまとめました。

 参加した生徒からは、「これまでなにも考えずに買っていたことが少し嫌な気持ちになった」「世界や将来に目を向けたい」などの感想が寄せられました。

 プロジェクトの概要・ワークショップの内容についてCANVASからも、「学生が自然と興味が持てそうな内容で良い」「幼児・小学生を対象にしたプログラムを考えるのも面白いかも」などフィードバックがありました。
 柳澤さんは、リテラシー教育の必要性・今後の普及が課題であることを踏まえ、今後は幼児から中学生も含めたリテラシーワークショップをCANVASに提案していく計画です。

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