昭和学報

【教員リレー】明日に向かう学修実践~ゼミでなら ゼミでこそ―英語コミュニケーション学科 井原 奉明 教授

昭和女子大学の大学新聞「昭和学報」の巻頭で長きにわたり連載した『巻頭言』。
2018年10月から『教員リレー』にリニューアル。「リレー」形式で、皆様に大学での学びのエッセンスをお届けします。
今回は英語コミュニケーション学科の井原 奉明 教授です。

本学の教育理念と目標

 本学の教育理念は「世の光となろう」ということばに集約されている。このことばには、どの学生も原石、磨き上げて光輝を放つようにという含意がある。教育目標は、「知識・技能」「自主・自律」「協働・調和」を掲げている。一人ひとりが知識や技能を身につけ、他者に依存しない主体として自立し、身につけた知識を知恵として発揮しながら周囲の人と協働・調和し、より大きな課題に取り組み、創造力を発揮する。そして、成果を振り返り、より高度な知識や技能を身につけるべく再出発し、力を一層伸ばしていく。学生がそのような螺旋状の過程を踏んで成長し続け光り輝くことを教育目標としている。

目に見える部分と見えない部分

 自ら学んだ力を外に向けて発揮するoutcomeを重視した学修への転換を本学でも意識しているが、outcomeは目に見える部分である。outcomeを地上に伸びた樹木に譬えるなら、それを支えているのは目に見えない部分、地下に張り巡らされた根である。根が十分でないと樹木は大きく育たないし、強い風雨に曝されれば倒れてしまう。根とはすなわち「人となり」である。自律心、向上心、克己心、勇気、チャレンジ精神、諦めない心、忍耐力、主体性、誠実さ、思いやり、傾聴力、協調性、リーダーシップやサポート力、人間関係の構築・調整能力、さらには過去に学び、未来を展望し、ゴールを思い描き計画を立てる力等々、こういった「人となり」が根である。私たちは目に見えるoutcomeを求めると同時に、全人教育的観点から「人となり」も涵養し、大きな光葉の樹を育てたいものである。

教育方法の創造

 そのようなことを考え、教育目標を達成するために学生主体の能動的学修法を我がゼミで工夫し実践している。教員は、テキストの選定、質問プリントの作成、学生の主体的学修の観察、長所や改善点の指摘をするが、授業時間の大半は学生に任せている。学生たちは、時間の使い方から内容の検討まで、授業を主体的に作り上げる。そうしないと何事も動き出さない。
 毎回の授業において学生は、「司会&ファシリテーター」「プレゼンター」「メンバー」の3役に分かれる。いつ誰がどの役を務めるかは一回目の授業の時に学生自身が決める。担当は偏りなく交替して務めるようにする。
「プレゼンター」は事前に割り当てられたテキストの該当箇所を予習し、資料を使いながら持ち時間の枠内で発表・報告する。この役の学生は、視線や声の大きさ、速さ、聴き手の態度や理解のモニタリング等に気を配りながら、「単なる情報提供」でなく「教える」視点をもって発表する。
「司会&ファシリテーター」は授業の導入から最後のまとめまで、タイムキープしながら仕切る。各回参加者を2~3人のグループに分け、発表・報告への質疑応答、質問プリント(基本・応用の2種)に対する回答(質疑応答・意見交換含む)、授業中の時間管理に責任を負う。この役は、「授業を作る(司会、時間管理、雰囲気作り)」「授業を立体的にする(意見を引き出す、質問・確認、意味の掘り下げ)」「交通整理する(テーマの確認、方向・軌道の修正、異論や反対意見の掘り出しや調整)」「合意形成」に留意し、「冒頭の雰囲気づくり(アイスブレイクは最初が肝心)」「冒頭の確認&最後のまとめ(その日に何をする(した)のか)」「ポジティブなことば遣いや態度」を成功の鍵として入念に準備・実行する。

プレゼンター(左)と司会&ファシリテーター(右)

 ゼミメンバーは全員「予習」が必須である。「予習」とカギ括弧に入れたのは、発展的にレベルアップしていくことを求めているからである。
 「予習」の第一段階は、「書いてあるところを正確に読む」であり、何が書いてあるか、章や節のタイトルを手がかりに正確に読み取るレベルである。これができるようになると、何の説明か、どのような問いに対するどのような例示・説明か、意識しながら読むようになるし、論理構成や文章表現に敏感になる。
 次の第二段階は、「書いてあるところの奥、書かれていないところを読む」である。既に得ている知識を駆使しながら、筆者が挙げていない他の例は何か、違う部分と結びつけられないか、自分が深く理解していないのはどこかに気づくように読むのがこのレベルである。
 次の第三段階は「問題を見つけて考え抜く」である。不明な点に対し、どのような問いを立てどのようにアプローチすればわかるようになるのか考えるのがこのレベルである。問い(質問や問題)を見つけたら、それに対する答えを性急に求め調べてはいけない。問いに対する複数の考え方(答えではない)を調べ、どの考え方が説得力をもつか、根拠を比較して考える。答えはあくまで自分で考えなければならない。多くの問いには正答がない。複数の答えを比較検討し、最も適切と思う答えを導くこと、そこまでがこのレベルである。
 最終段階は「効果的に伝える」である。自分の答えを説得力十分に伝えられるのがこのレベルである。これが「予習」である。学生はゼミの2年間を通して繰り返し「予習」し、レベルアップに挑戦し続ける。
このような「予習」ができると、授業時の質問が精選されてくる。「答えが書いてあるのに見落とした、説明してくれたのに聞き逃した」という質問や「回答者がすぐに答えられる」質問は、日が経つにつれまず出てこない。「よく考えないと答えられない」「みんながわからない」「みんなが『わかっていない』ことを自覚する」「みんなが『答えが何か考えよう』と行動するきっかけとなる」質問がだんだんと出てくる。そのような質問は、学生全員にとって利益となり、そこまで行くと教員が用意した質問プリントなしに授業が回るようになる。

質疑応答

チームごとにディスカッション。全員が主体的に発言する

 そして次の学期は学生プロジェクトとしてテーマを自分たちで決めて研究し、小冊子を作り上げられるところまで進んでいく。
 時に、教員の解説や忠告を求められることもある。もちろん適宜行うのだが、解説においては、あえて「わからないところを残す」ように心がけている。「わからないところを自分(達)で解決する」ように行動させたいからである。

成果をまとめた小冊子

根を強くする

 学生による授業が終わった後、いわば余白の時間に教員からフィードバックをしている。目に見える部分、outcomeについては、理由を添えながら長所と改善すべき点を指摘し、目線よりやや高い所に次の目標を設定してする。一方、目に見えない部分については和顔愛語を心がけ、良いところを褒め、やる気を惹き出しながら励ます。もちろん、甘えや怠けが見受けられればただすが、ポジティブな表情と態度、ことばは、土に撒かれた水や養分のごとく、学生の「人となり」、つまり根に沁み入って吸収される。根が強くなれば、地上の樹木も枯れることなく大きく生え育つ。

光り輝こうとしているゼミ生たち

最後に

 ここに紹介した学修方法は、効率は求めていない。ゼミ生たちは相互に教え学び合い、磨き合い、それぞれの成長曲線を描いて光り始めるようになる。手を取り足を取り教わっている意識はまったくないだろうが、教員の意図と慈愛は理解してくれていて、前向きに明るく取り組んでいる。段階的にレベルアップし自信をつけていく様子を見ると、この方法が間違っていないことを実感する。
この3月もこうしてゼミ生たちが巣立っていった。これまでの卒業生たちにはゼミで身につけた力を信じ、眩いばかりに光り輝いてほしいと願い、新たに入ってくるゼミ生たちには今後の成長を期待し、筆を置くこととしたい。

巣立っていくゼミ生たち

プロフィール

井原 奉明 (いはら・ともあき) 教授
昭和女子大学国際学部英語コミュニケーション学科教授。
専門分野は哲学・倫理学、言語学、思想史。
主担当科目は「英語学研究」。この科目では、生活に織り込まれたことばがどのような働きをしているのか、活動の中でとらえる意味とは何か、どのような研究に発展性があるかを探っている。3年次ゼミでは英語学の一歩進んだ考え方を学びながら、ことばと人間に関する考えを深める。4年次ゼミでは、人々がモノを創り、伝え、つながる基盤となるばかりか、人間のアイデンティティ形成の基盤にもなる「ことば」の存在の大きさを学ぶ。

英語コミュニケーション学科について
― 詳細な教員紹介はこちら(昭和女子大学教員データベース・新規ウインドウ)

LINEで送る

FOLLOW US!
昭和女子大学の日々を発信中!
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • Youtube
昭和女子大学 〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57
© Copyright 2003-2018 Showa Women's University All rights reserved.
© Copyright 2003-2018 Showa Women's University All rights reserved.