昭和学報

【教員リレー】やる気の出し方 【青年版】―心理学科 田中奈緒子

 昭和女子大学の大学新聞「昭和学報」の巻頭で長きにわたり連載した『巻頭言』。
 2018年10月から『教員リレー』にリニューアル。教授陣のエッセイを「リレー」形式でお届けします。皆様に大学での学びのエッセンスをお届けします。
 今回は人間社会学部心理学科の田中奈緒子教授です。

 1月も下旬となり学期末が近づいているためでしょう。廊下で、あるいはエレベーター内で、期末テストや課題レポートについて話す学生の皆さんの声を、よく耳にするようになりました。頑張る、ほどほど…など、それぞれの取り組みの度合いにはもちろん差があります。やる気はどうして生まれてくるのでしょうか。

やる気・・・動機づけとは

 心理学では、人や動物の行動に目的や方向性をもたせ作動する推進力となるものを「動機づけ(motivation)」と呼び、研究対象としています。心理学者エドワード・L. デシはモチベーション理論において、2種類の動機づけがあるとしました。一つは、ある特定の活動それ自体から引き出される動機づけである「内発的動機づけ」です。もう一つは、罰や報酬のような外的な要因を予想することで、ある特定の活動へと誘導する「外発的動機づけ」です。『学ぶ』という活動を取り上げてみると、 内発的動機づけによる学びとは、外から圧力をかけられることなく、学ぶことそのものへの興味や楽しさによって自ら学ぶことであり、一方、外発的動機づけによる学びは、低い評価や叱責などの罰を避けるために、あるいは高い評価や賞賛などの報酬を得るために学ぶことと言えるでしょう。そして、内発的動機づけによる学びこそが望ましい学びであるとされました。しかし、その後、内発的動機づけと外発的動機づけとは明確には区別がつきにくいこと、両者の相乗効果について検討する必要があること、さらに、青年期の学びにおいては、学ぶことが自分の将来のキャリアや社会的役割に関わっていると考えることが動機づけとして重要であるといった指摘がされています。

少年院での授業風景から

 私の専門は非行臨床心理学であり、研究テーマの一つに少年院で行われている矯正教育があります。少年院とは、家庭裁判所から保護処分として送致された非行を犯した少年に対し,その健全な育成を図ることを目的として矯正教育等の処遇を行い、改善更生と円滑な社会復帰を図る法務省所管の施設です(法務省HP参照)。少年院では、少年の社会復帰を図るため、資格取得などの職業指導に加え、近年では教科指導・就学支援にも力を入れています。これは、少年院に送致された少年の多くが、中学校卒業あるいは高等学校中退という学歴であることにより、安定した職業に就くことがむずかしいという実態があるためです。先日、ある少年院で行われている教科指導のプログラムを見学しました。講師の多くは外部講師(元教員、塾講師などの民間協力者)の方々で、数人の少年たちと机を囲み、教科書やワークブックを用いて授業をおこなっていました。少人数ということもありますが、講師の先生に積極的に質問したり答えたりと、少年たちはとても熱心にかつ楽しそうに授業に取り組んでいました。これまで勉強をしなかった、あるいはすることができなかった少年たちにとって、少年院での授業は、学ぶ楽しさ、わかることの充実感を感じると共に、将来、専門学校や大学へ進学したいという目的につながっているとの話を伺いました。前者は内発的動機づけに、後者は、将来のキャリアにつながると考える動機づけにあたります。

何のために学ぶのか

「(出したいのに)やる気がでない」状況を、多くの方が体験していることと思います。そんな時、この学びは自分の将来のキャリアや社会的役割にどのように活かせるのだろう、と考えてみましょう。昭和女子大学では、多彩なプロジェクト活動が行われています。心理学科でも、今年度から「心理学総合演習」という科目を開講しました。様々な領域におけるプロジェクトを体験する過程で、社会の中での心理学の役割を理解すると共に、大学での専門科目などでの学びを統合して、幅広い実力や人間性を養うことを目指しています。複数のプログラムがありますが、その一つ「防災・防犯活動による地域貢献」を私は担当しています。受講した学生の皆さんは「犯罪心理学」や「災害の心理学」といった心理学科の専門科目で学んだ知識を踏まえ、社会での様々な体験を通して、心理学が社会でどのような役割を果たしているか、さらには自分自身が社会でどのような役割を果たせるかに思いを巡らせていました。
大学での学びを、自分の将来のキャリアに、そして社会にどう役立たせることにつなげられるか。プロジェクト活動にはそれについて考える機会が豊富にあります。積極的に参加して、学びへのやる気を高めましょう。

東京都職員の方と共に、地域の危険箇所パトロール(心理学総合演習)

田中 奈緒子教授
専門は臨床心理学、犯罪心理学。青年期における不適応とそのサポートについて研究している。担当科目は「非行臨床心理学」「臨床心理査定演習B(院)」「犯罪心理学研究(院)」など。学問のきっかけは、最初の職場である警察少年課で多くの非行少年に出会い、彼らの持つ不安定さと成長の可能性に惹かれたことから。

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心理学総合演習の内容はブログでも紹介しています
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