昭和学報

シンポジウム「女性リーダー育成への挑戦」に学ぶ①

記者:N.K
心理学科所属
昭和女子大学女性文化研究所(武川恵子所長)がシンポジウム「女性リーダー育成への挑戦 ~企業女性への調査結果から~」を今秋開催した。昭和女子大学創立100周年を記念して出版した「女性リーダー育成への挑戦」(御茶の水書房)に基づき、企業の女性への調査結果をめぐり討議された。シンポジウムの概要を報告する。
「女性リーダー育成への挑戦」は、女性文化研究叢書第12集として出版された。叢書は1991年に創刊。第12集は女性リーダーをいかに育成するのかというテーマで、全8章を研究員たちが分担してまとめた。武川所長によれば、「女性リーダーの育成を大きな使命とする本学において、今後の100年のビジョンを考えるうえでリーダーシップ教育のさまざまな課題を多面的に研究することが重要」ととらえ、創立100周年のテーマに設定したという。シンポジウムでは各章を担当した所員が詳細を発表した。

役員を目指す女性の育成に必要なもの

「役員を目指す女性の育成に必要な経験・意識・環境とは」(第4章)について伊藤純教授、青木美保准教授が研究概要を発表した。本学が内閣府から受託した「女性エグゼクティブ育成研修」の参加者で部長級以上の9人を対象に、女性役員の増加・育成促進にとって重要であると考えられる「経験」、「環境」、「意識」についてインタビュー調査を実施し、回答から浮上した共通テーマ、構成概念をまとめた。

経験その1 : 一皮むける体験

回答者たちの一皮むける体験は1)大きすぎる任務、2)新規事業・事業売却・子会社の責任者、3)失敗・苦悩の3つに大別された。これらの一皮むける経験がマイクロマネジメントからの脱皮、全体俯瞰力、視座を上げる、視野を広げる、マネジメントスタイル・リーダーシップスタイルを見直すきっかけになったとの回答がされた。
その中で新規事業・事業売却・子会社の責任者ポジション経験者達から「この異動は失敗してもよい傍流ポストなのか?本命の男性なら配属されないポストなのではないか?事業売却後の自分のキャリアパスは?」という疑問が頭をよぎり、疑心暗鬼に陥ったという回答が複数あり、異動理由や今後のキャリアパスに対する説明不足が指摘された。

経験その2 : リーダーシップスタイル

エンパワーメント、部下に失敗させながらのプランBシミュレーション、個に応じた強み育成、アクティブリスニングなどが回答に挙がった。また一つのスタイルではなく組織・状況・任務・役職に応じたリーダーシップスタイルを取る柔軟性や対応力をもった人が多数いた。

環境 : スポンサー、人事制度・施策、「配慮」という名の性差バイアス

回答者の多くが何らかの形でスポンサー(人事に対し発言権を持つ地位にいる上級管理職、一皮むける体験に抜擢する権限がある上位管理職)のレーダーに浮上し、それが発端となりキャリアアップにつながった。また、社内ネットワークがより重視され社外ネットワークに関しては社外人脈を仕事に積極活用する人は少数であった。
女性役員増加育成促進に必要だと思う人事制度・施策として、母数拡大、役員候補選定・ナンバリング・育成プラン作成、早期の一皮むける体験、役員必須項目チェックリスト、メンター・スポンサー制度、多様なライフスタイルや中途採用・パートを含めた人事制度・施策の必要性などが回答にあがった。
また、「配慮」という名の性差バイアスによりジョブローテーション・キャリアトラックにおける機会不均衡を憂慮する回答が挙げられた。機会不均衡が昇進に必要な経験値不足に繋がるのであれば憂慮すべき事態であり、性差による戦略的活用はどこまで容認されるべきかという課題も提起された。

意識 : アンコンシャスバイアスを払拭する意識改革

本人のやる気・覚悟・視座を上げる意識改革が必要であることは当然だが、幼少期からのすり込まれた男女の役割分担や性差バイアスがアンコンシャスバイアスとして継続する中で昇進意欲がないのは当たり前だとの声もあった。
解決策として、企業側が幹部候補を選定し、順位付けをして具体的育成プランを立てる、早めに子会社の役員にする、ジョブローテションをさせながら難易度を上げていく、管理職のメリットをアピールする、教育現場での女性リーダーシップ育成の必要性などが挙げられた。

女性役員候補育成の課題

 「日本における女性役員候補育成の課題~女性エグゼクティブ育成研修参加者及び企業勤務女性社員へのアンケート調査より~」について、第5章を担当した小森亜紀子専任講師が発表した。
 アンケートは、①内閣府の委託事業「女性リーダー育成のためのモデルプログラム思考実施の効果などの調査研究」参加女性社員14人、②ダイバーシティ推進機構会員企業の女性社員90人、2つの調査を実施し、回答に基づいて分析した。
 ①役員になることについて、知識・スキルの不安は研修後減少したが、生活マネジメントについての不安は増加したという。回答者たちが研修後職場に戻り、現実に直面している姿が推察された。
 今後の課題として昇進意欲やネットワークに焦点を当てて研究する必要性を指摘した。また、同性のロールモデルが少なく、女性の昇進意欲を高めるには多様なロールモデルが必要であるといった先行研究があり、組織外ネットワークの重要性を理解する必要があると提言した。
 ②企業の女性社員は、社外より社内のネットワークを重視していた。他国に比べ雇用流動性が低く、社外ネットワークの構築が難しいことが背景にある。
 今後企業における女性管理職・役員を増やすには、社内のロールモデルだけでなく女性社員の社外ネットワーク構築機会も重視することが必要であることを経営層や社員に理解してほしい。また、仕事満足度は管理職群女性の方が有意に高く、プライベート満足度に管理職群と非管理職群に有意差はないことについて、非管理職の女性社員に知ってほしいと指摘した。

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