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市川清史准教授に聞く
日本の有名文学のルーツを探る公開講座「本当はこわい杜子春伝」

 昭和女子大学人間文化学部日本語日本文学科では公開講座「本当はこわい杜子春伝」を開催します。
 この講座では、日本の有名な文学作品の基となった中国の古典小説を紐解きながら、その描写の違いなどを学びます。講師をつとめる日本語日本文学科の市川清史准教授に話を聞きました。


市川清史 日本語日本文学科 准教授

▶市川清史 日本語日本文学科 准教授
東京生まれ。二松学舎大学大学院博士課程修了。専門は中国古典文学、特に盛唐・中唐の詩。1993年から2年間南京大学に留学。2000年から昭和女子大学専任講師。現在准教授。論文に「李益『春日晉祠同聲會集得疏字韻』詩について」(学苑)「郎士元について」(中国学会報)。授業では隔年で志怪伝奇小説を取り上げている。

-そもそも、芥川龍之介の「杜子春」には基となった話があるのですか?

 芥川龍之介は漢籍(中国の書物)を親しんでいたといい、中華民国時代の中国から本を買ってきてはよく目を通していたそうです。そこで知った『杜子春伝』というお話を子ども向けにかみ砕いたのが『杜子春』です。
 『杜子春』は母親の恩を忘れない子の姿が印象的ですが、もととなった『杜子春伝』は千二百年前の唐代の人々の価値観が現れていて、杜子春に襲い掛かる苦難の描写も残酷なものがあります。

-日本人は中国の文学と親しむ機会が多かったのですね。

 そうです。たとえば、奈良平安の昔から江戸時代までの日本人の学問は漢詩文でした。日本人は語順の異なる外国語の古典を読むのに返り点を発明しました。返り点を打つ習慣はその後にも残り、幕末の人々は一時期だけですが、英語の文章に返り点を打っていたといいます。他にも、幕末・明治の頃、日本人は西洋の概念や思想を日本語に翻訳するにあたって、中国の古典の中に出てくることばをあてはめていました。日本人には深く漢語が根付いていたためといえます。文系の学問だけでなく、物理や化学が日本語で学べるのもこのおかげです。
 日本でよく知られている「大岡政談」も一部は中国の古典に由来します。ある子どもの親だと自称する女が二人出てきて、どちらが本当の親か決めるときに、子どもの両腕を持って引っ張りっこをさせ、子どもがかわいそうだからと手を放した方を親とみなす判定など、北宋の時代の名裁判官を描いた小説(ただし口語小説)がモデルといわれています。

-日本語日本文学科で、中国の文学を学べるのですね。

 研究室に今は4年生1名、3年生3名が研究室に所属しています。3年では今年の前期は杜甫を読んでいました。学年の終わりごろに自分が専攻する作品を決めていきます。

-学生は中国文学のどんな点に惹かれていますか?

 ストーリーの魅力が大きいですね。中国文学を基にした漫画やアニメで興味を持つケースもあるようで、三国志演義や水滸伝などを学ぶ学生もいます。
 例えば高校の一部の古典の教科書に載っている「離魂記」は主人公の魂だけが抜けて、好きな人のところに飛んでいってしまいます。飛んでいった先で子どもができてしまったりと、とてもユニークなお話です。こういったストーリーの面白さも中国文学のひとつの特長ですね。

-中国文学は中国語ができないと読めないのでしょうか?

 返り点・送り仮名を付けて日本語の文のように読解する「訓読」ができれば、文語体で書かれた文言(ぶんげん)であれば読めます。現代の中国語も、無理矢理訓読しようと思えばできないことはないです。実際、日本人は江戸時代に口語体の小説も読んでいました。でも、今の中国語の訓読は、かなり難しいかもしれません。ただ、中国語ができたほうが漢詩の平仄(ひょうそく:漢詩のルールの一種)などは理解しやすいでしょう。
 訓読が苦手なら、翻訳も数多く出版されているのでそちらからチャレンジしてみるのもお勧めです。

-公開講座の紹介を一言お願いします。

 今回の講座では、「杜子春伝」や『剪燈新話』の「牡丹灯記」を紐解きながら「実はこんなところが原作は違っていた」「中国の小説を種本(基となる題材)としている日本文学が多い」ということを学べるとよいです。
 日本文学、中国文学の物語に関心のある方はぜひご参加ください。

日時: 2020年10月31日(土) 14:00~15:30
形式: オンライン(Zoom)で実施
参加無料
※お申し込みいただいた方にURLをお知らせします
講師: 佐藤正光(東京学芸大学教授)
市川清史(昭和女子大学 人間文化学部日本語日本文学科准教授)
申し込み方法:こちらからお申し込みください。
(〆切:10月30日)
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